- 2009.04.30 Thursday
- 00:33
世尊寺(比蘇山寺)を出てから吉野山へ向かう前に、もう一つ行きたい場所があった。吉野山からは反対に位置する津風呂湖の北側に山口という集落がある。その村へ入ってしばらく行くと、吉野山口神社がある。鳥居の両脇には徳川吉宗の寄進による燈籠が二基置かれている。境内には吉野山口神社の本殿だけでなく、高鉾神社の本殿も置かれている。この高鉾神社は、元は龍門岳の山頂に祀られていたのだという。
(下の写真は吉野山から龍門岳を望んだもの。)
吉野山口神社の左側の道を集落の中へ入っていくと、やがて杉の木立が鬱蒼と茂る林道へ入る。そこからさらに上がり、舗装した道が途切れるあたりまで行くと、道の脇に「松喰い虫の被害のため、倒木の恐れあり」という木札が上がっている。これまでの道よりさらに細い地道になっているし、もし木が倒れてきたら・・・・などと考えて、少し広くなっているところを探し、車を降りて歩くことにする。
昼間なのにほとんど陽が射さないほど大きな杉の森が延々と続く。道も落ち葉が積もり、湿ったままである。
しばらく登って行くと道の右側に龍門寺跡の看板が立っている。
龍門寺は白鳳期に義淵僧正が、国家安泰と藤原氏の繁栄を祈って建立し、当時隆盛を誇った神仙思想の中心であったという。前回に述べた神叡もまた義淵の弟子であった。かつて菅原道真も、藤原道長も、この寺に参詣したのだという。
今昔物語には龍門寺には安曇、久米という二人の仙人がいて修行をしていたが、久米仙人が空に昇った時、吉野川で洗濯をしている女性を見て、落下してしまい、俗人に戻ってしまったという話が書かれている。
久米仙人は聖武天皇の時代、東大寺大仏殿の建立の際、神通力で建設資材を運び集め、その褒賞として免田30町を賜り、久米寺を創建したという。
出来ればそこから山頂まで登りたかったが、その日は時間がないので、途中で引き返し、吉野山へと向かうことにする。
(続く)
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旅行
4月22日〜23日、「惟」(ゆい)に連載している〈風の起こる処」―空海を巡る旅の取材のため、吉野方面に出かけて行った。
神戸から阪神高速で松原JCTまで行き、阪和道へ、さらに南阪奈道路を終点まで行き、国道169号線へ。
もうあと少し、というところで多分世尊寺の周りは何も無いだろうと思いつき、「道の駅」へ寄る。
レストランに入る前に売店の方を覗くと、半分以上がみずみずしい生野菜と、可憐な花を咲かせている様々な山野草や、藤などの木々の苗まで販売している。採れたばかりの筍(たけのこ)が台の上に山ほど並べられていた。
そこから10分ほどで、すぐに世尊寺に着く。石段を登って山門を入ると、盛りの時はさぞきれいだっただろうと思う桜が、今はすっかり葉桜になって風にそよいでいる。中門を入ると本堂の左右に見事な藤の花が咲いている。
このお寺は5回も名前が変わっていて、最初が比蘇山寺、それから吉野寺、現光寺、栗天奉寺、世尊寺となり、現在に至っている。今は禅宗のお寺なのだという。
奈良時代には僧・神叡を中心に「虚空蔵求聞持法」を修した「自然智宗」(じねんちしゅう)と呼ばれる山岳仏教の中心であった。
ここへ来るまでは多分その時代のものは何も残っていないと思っていたのだが、驚いたことに、本堂の中へ入ると、本尊である樟の一木造りの阿弥陀如来座像は用明天皇の時代のものであり、次の間に安置された十一面観音菩薩立像もまた、推古天皇の頃の作だという。
空海が最初に「虚空蔵求聞持法」を修したのも、おそらくこの寺だと思われるのだが、彼もまた仰ぎみたであろう御仏に出会えたことは思いがけなく、とても感動した。
中門を出たところには東塔、西塔の跡があり、周辺には石楠花の花が満開だった。(続く)
もうまもなく桜の季節も終わろうとしている。妙法寺公園の桜もすっかり葉桜に変わってしまった。20年ほど前に母屋の一部を壊して建てた、この家に移って来た時に植えた枝垂れ桜は、毎年見事な花をつけてくれる。これは七分咲きの頃の写真だが、今は盛りの時を過ぎ、緑の葉も出て、はらはらと落花の季節を迎えている。
先週フランスから若い友人が来た時には、ちょうど満開の頃だったので、とてもよい花見が出来た。
4月11日に東京に着いて、14日の早朝夜行バスで神戸に到着し、再び16日には夜行バスで東京へ移動。イースター休みなのでゆっくりできないのだという。
彼女は阪神淡路大震災の時、神戸に留学生としてやって来て、大学の寮に住んでいたのだが、私と娘と、我が家に滞在していたフィンランドからの留学生の3人で、フランス語を教えてもらっていたので、我が家にもよく泊まりに来ていたのだ。地震の後の家の片付けなども一緒に手伝ってくれた。
一昨年ローマで会って以来の再会だった。今年の夏には教師同士の交換のシステムで、合衆国のフロリダに行くという。(彼女は現在パリの高校で英語を教えている。フロリダでは1年間フランス語を教えるのだという。)
私はアメリカにはまだ行ったことがないので、ちょうどその間に行ってみようかといろいろ話をした。ヒューストンにあるロスコ・チャペルに行くのが長年の夢である。
それにしてもまさか彼女がアメリカに行くなどということは考えてもみなかった。私もきっともう合衆国には行く事はないだろうと思っていた。生きている限り、いつ何があるかなどということは多分誰にもわからないのかもしれない。
毎年ロウバイやミツマタが咲き終わった頃に、姫辛夷の花が咲き始める。ところが今年は待てど暮らせど1輪も花が咲かない。不思議に思って木のそばに行ってよく見ると、何と咲いているではないか。と言っても花弁が開く部分は全くなく、花萼(がく)の部分のところだけ辛うじて残っている。どうやら鳥に食べられてしまったらしい。花が咲いてからならわかるはずなので、もしかすると蕾のうちに皆啄ばまれてしまったのかもしれない。それにしても一本の木丸ごと食べるなんて・・・・・。
そういえばパンジーの鉢も、一番最初に咲いた花は皆、こんな感じで芯の部分だけ残っていた。寒さが戻ったので凍えてしまったのかと思っていたのだが・・・・・。
今週になってようやく二輪だけ、思いがけなく姫辛夷の花が咲いた。たった二輪だけの花は殊更可憐に思える。
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月8日(水)〜14日(火)、大丸神戸店9階特設会場で「神戸の百人色紙展」が開催中です。私も出品しております。三宮、元町にお出かけになる際にはどうぞ御覧下さい。
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辞書
☆〔五大ごだい〕地・水・火・風・空の五つをいう。一切の物質に偏在して、それを構成するもととみて大という。
☆〔六大ろくだい〕仏教用語で、万物を構成する六つの要素。地・水・火・風・空・識。六界。密教では法身大日如来の象徴とする。
☆〔識しき〕仏教用語で、対象を識別する心のはたらき。感覚器官を媒介として対象を認識する。六識・八識などに分ける。
☆〔法身ほっしん〕仏教用語で、永遠なる宇宙の理法そのものとしてとらえられた仏のあり方。
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